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「第一種指定化学物質」と石けん

原発を社会に受け入れさせるために、国や電力会社はPA(パブリックアクセプタンス)戦略をしてきたといいます。

その戦略は大きく三つあり、一つは、電気事業連合会が行なってきた言論に対する抗議戦略で、メディアに対しておびただしい数の抗議書を送りつけました。

二つ目は、小学校から高校までエネルギー環境教育という名の下で原発是認教育をしてきました。

そして三つ目は、名の知れた文化人を起用して原発の安全性をPRさせたものでした。

PRTR法は、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質を対象に、環境中に広く存在すると認められる物質を「第一種指定化学物質」とし、354物質が指定されていました。

 

1999年にPRTR法が制定されて以来、2008年と2021年に政令の改正があり、指定化学物質の差し替えが行われています。

 

1999(平成11)年に公布された第1種指定化学物質にはダイオキシンや重金属類、農薬成分などと並んで6種類の合成界面活性剤が含まれていました。

 

2008年、見直し・改正が行われ、第1種指定化学物質462物質に増えましたが、AS、AESなど4種類の合成界面活性剤が新たに指定されました。

また、DACは除外されました。

石けんの主成分が第一種指定化学物質??

2008年1月に開催された化管法対象物質見直し合同会合において、石けんの成分であるオレイン酸ナトリウムとステアリン酸ナトリウムがPRTR対象物質の候補に上げられましたたが、同年7月、「ステアリン酸ナトリウムとオレイン酸ナトリウムは環境中で不溶性であるカルシウム塩となり、カルシウム塩の水溶解度限界までの濃度において毒性の発現がないと考えられ、生態毒性をクラス外に修正します。」ということで、石けんの主成分は候補から取り下げられました。

 

2021年の改正案では、石けん成分の「飽和・不飽和脂肪酸ナトリウム塩」(固形、粉石けんの主成分)と「飽和・不飽和脂肪酸カリウム塩」(液体石けんの主成分)が第一種指定化学物質の候補物質に含まれました。

 

改正案は石けん主成分を合成洗剤の成分と同列に扱うことを意味します。

 

政府の審議会(厚生労働省・経済産業省・環境省の審議会の合同会合)は、実験室での「生態毒性」試験で水生生物に悪影響が出たことを理由に挙げていました。

 

それに対して消費者団体や専門家から懸念の声が挙がり、パブリックコメントにも多くの意見が寄せられました。

 

実験室と実際の河川・海洋では環境が全く異なります。

 

脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムは自然由来の物質であり、河川や海水中の硬度成分と結合して金属石けん(石けんカス)に変化することで生態毒性は発現しないこと、また両物質とも微生物で分解されやすい性質を持ち、河川や海洋中で検出された例がないことが、専門家から指摘されました。

 

石けんは汚れを取る作業が終わると、直ちに石けんカスになって河川に棲む微生物のエサになります。

 

また、石けんは、発酵食品などと同様、人間の日々の営みの中から生まれた産物であって、生態系に組み込まれ、人や環境にほとんど負荷をかけない界面活性剤なのです。

 

人類は数千年にわたって環境を害することなく利用してきたことが、石けんの安全性を実証しています。

 

2021年の改正案でも石けんの主成分の第一種指定化学物質としての指定は見送られました。

 

石けんが合成界面活性剤と同じ環境汚染物質であることなどはありえないことですが、石けんを第一種物質に指定させようとする策動はこれからも繰り返されるでしょう。

日本石鹸洗剤工業会の石けん「対策」

  • 1979年10月、琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例・琵琶湖条例が滋賀県で可決される前に、日本石鹸洗剤工業会は「合成洗剤反対には科学的根拠がない」として、大々的な宣伝を行いました。

  • 2001年1月8日から朝日新聞・家庭欄「くらし」で、『石けんも地球を汚す? 合成洗剤とどちらがいいか』というタイトルで4回にわたって特集が組まれました。

  • 特集の内容は、合成洗剤の方が環境負荷は低いと印象付け、最後は日本石鹸洗剤工業会の「国内、海外とも、合成洗剤は通常の使用では問題がないことが1980年代初頭までに確認されている。洗剤の安全性に疑問が出されるときは決まって、現実とかけ離れた条件下での実験結果を都合のいい結論に導いている傾向がある」と、合成洗剤寄りの見解で締めくくられていました。

朝日新聞の記事は、1999年7月に、合成界面活性剤がPRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)の第一種特定化学物質に指定されたことに対する合成洗剤メーカーの警戒感が背景にあると考えられます。

その結果、石けんを推進する自治体は、神奈川県、京都府、我孫子市の3つに激減しました。

 

PA(パブリック・アクセプタンス Public Acceptance)とは、「社会的受容性」と訳され、社会において企業活動の理解促進を図る活動のことをいいます。

 

経済評論家の内橋克人(故人)さんの話「原発安全神話はいかにして作られたか」(NHKラジオ2011年3月29日放送)から、原発PA戦略の部分をご紹介します。

石鹸洗剤工業会の「『「石けん推進」についてアンケート』は、原発PA戦略の一つである「言論に対する抗議戦略」に酷似しています。

 

  • 2012年11月に放映されたNHK高校講座・「エコファッションが地球を救う ~衣生活と環境問題~」では、NHKの教育番組なのかと目と耳を疑うような石けんに関する説明がされていました。

BOD(生物化学的酸素要求量)に焦点を絞り、石鹸のBODを「川を汚すもの」として非難し、合成界面活性剤の毒性についてはまったく触れていません。

 

生物の力で分解でき、自然に還ることができるものと、明らかな毒性を持つものとを単純に比較することがおかしなことですが、次世代の若者を教育するための番組で、明らかに合成洗剤に不必要なまでに肩入れをしており、石けん・合成洗剤に関する偏った伝え方をしています。

ナチュクリじいさんの辛口コラム

運営会社:暁石鹸株式会社

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