
有機物汚濁と自然のメカニズム
水環境への影響は、有機物汚濁、生分解性、水生生物への影響の三つの面から検討する必要があります。
石けんは生分解性が良く、水生生物への影響が少ないのですが、有機物の量は多くなります。
合成洗剤メーカーは、石けんの有機物の量の大きさを誇大に問題視し、合成洗剤の問題点を覆い隠しながら巨額の宣伝費を使って売上げを伸ばしています。
しかし、合成洗剤はABSによる河川の泡立ちや主婦湿疹、湖沼の富栄養化問題などの社会問題を起こしましたが、石けんは過去に水、環境、生態系に対して何らかの問題を起こしたということは全くありません。
石けんは、1959年には38万トン(現在の石けんの消費量は約18万トン)消費していましたが、河川は今よりきれいでした。当時は下水道の普及率も今よりもはるかに低かったのです。
現在の石けんの消費量が倍増しても、問題は生じないことは確かです。
生態系の影響で最も問題になるのは、有機物の大きさではなく、化学物質としての生物への毒性の強さです。
化学物質の毒性と有機物汚濁は同一視するということは、人間が炭酸ガスを出すことも、地球の温暖化に悪い、ということになります。
現時点では、私たちが炭酸ガスを出しても、植物が炭酸ガスを吸って酸素を出すという自然のメカニズムが働いています。同様に、有機物が水環境に流れこんでも、微生物が分解して水をきれいにするメカニズムが働いていれば問題は起こりません。
代表的な合成界面活性剤であるLAS(直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)は、洗濯機からの排水が100万倍に希釈されても、ある種の魚に忌避行動という自然のメカニズムそのものを変えてしまうという、非常に大きな問題を抱えています。
下水処理場でも、合成洗剤は微生物(活性汚泥)に悪影響を与え処理能力を低下させますが、石けんは逆に処理能力を高めます。
下水道、ダム建設、地方財政など、水循環破壊の現場にたって変革のために活動してきた加藤英一氏
は、LASと石けんの下水処理場での挙動について以下のように報告しています。
処理場の処理能力が高くなったことと石けんのBOD(注)が分解しやすいため、流入負荷が増えても放流負荷が減少すると考えられます。処理能力が高くなったことは活性汚泥の種類や数の状況(繊毛虫類の増加、生物数や生物活性の増加)から証明されます。
加藤英一著「誰も知らない下水道」北斗出版)
(注)BODはBiochemical Oxygen Demand(生物化学的酸素要求量)で、有機物による水の汚れ具合の指標とされている。
石けんや合成洗剤は最終的には水環境に放出される有機汚濁物質ですから、「生分解性」であることが最も重視されるべきです。
生分解とは、有機物が好気性細菌などの微生物に分解され二酸化炭素や水などの無機物になる(究極分解)ことです。
現在、日本の一般家庭で使われている洗剤は生分解性があるとされていますが、JIS法でいう生分解性は、「洗剤」でなくなったということだけで、有機物でなくなったわけではありません。
界面活性剤の生分解性に関する研究は比較的古くから実施され、多くの研究報告が出されており、以下のことが明らかになっています。
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石けんは究極分解性が非常に良い
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合成洗剤では究極分解性の悪い洗剤がある
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オキシエチレン鎖やベンゼン環をもつ界面活性剤は究極分解性が悪く、特にLAS(直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム)ではそれが著しい
石けんは、有機物負荷は大きいが生分解性が高く、生態系に優しい洗剤なのです。
ナチュクリじいさんの辛口コラム
運営会社:暁石鹸株式会社
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